大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)226号 判決

一 請求の原因一ないし三は当事者間に争いがない。

二 そこで、本件発明と第一引用例を対比検討する。

1 本件発明について

前記争いのない事実及び成立に争いのない甲第四号証(本件発明の特許公報)によれば、本件発明は、パツケージと接触する部分を金属等の良導体よりも抵抗の大きい導電材料で作成し、全体としては導電性を有する材料からなるパツケージ用支持具に関するもので、静電気によつてパツケージが受ける悪影響とりわけ回路素子の特性変化や破壊を防止することを目的としていること、右特許公報には、「本発明の支持具は、少なくともパツケージと接触するカードガイド部分12が金属等の良導体より抵抗が大きい導電性材料で作成されているため、電荷の移動は十分に緩慢であり、瞬時的に大電流が流れることは到底あり得ないのである。」との記載(二欄三一行ないし三五行)があることが認められる。

この事実によれば、本件発明においては、パツケージに帯電している電荷を、その支持具との接触部分であるカードガイド部分12を介し本体フレーム11から大地へ向う電気的接続手段(甲第四号証の二欄一三行ないし一四行)を通じて、大地に緩慢に放出する作用を奏するものということができる。

2 第一引用例について

(一) 第一引用例の記載内容が審決摘示のとおりであることは当事者間に争いがない。

また、第一引用例のラツク(本件発明の支持具に対応する。)がプリント回路基板(本件発明のパツケージに対応する。以下、「パツケージ」ともいう。)と接触する部分をも含め全体として導電性プラスチツクで作られ、右導電性プラスチツクが本件発明の支持具同様金属等の良導体より抵抗の大きい導電性材料であることも当事者間に争いがない。

(二) 第一引用例には、かかる導電性プラスチツクをラツクに用いた作用効果として、「接地された仕事場で使用されること及びその材料は電子部品や基板に伝わろうとする静電気の帯電を避けることができる。」と記載されていることは、前叙のとおり当事者間に争いがない。右記載はラツクを導電性プラスチツクで形成することにより、ラツクに静電気が帯電しても、その電荷はラツクにより大地側に放出され、ラツクにより支持されているパツケージに対し静電気による悪影響を与えることはないという作用効果を得ることができることを示している。

このように、第一引用例には、ラツクを導電性プラスチツクで形成したことによる作用効果として、パツケージに対する悪影響防止のため、ラツクが帯電した場合の電荷の放出に関する記載はあるが、パツケージ自体が帯電した場合における電荷の放出に関する記載はない。

(三) しかしながら、ラツクにパツケージを着脱するに際し、ラツクだけでなくパツケージが帯電することも当然起り得る現象である。そして、帯電したパツケージを第一引用例のラツクに装着した場合、前記のようにラツクは金属等の良導体より抵抗の大きい導電性プラスチツクにより形成されているから、パツケージの電荷はラツクを介して緩慢に大地に放出されることとなり、前記のようなパツケージ自体の帯電による静電破壊や特性劣化という悪影響を回避することができることは明らかなところである。

3 前記1及び2に述べたところによれば、本件発明も第一引用例も、支持具又はラツク(いずれも特にパツケージとの接触部分)を金属等の良導体より抵抗の大きい導電材料により形成することによつて、静電気のパツケージへの帯電を防ぎ、パツケージの受ける悪影響を防止することを目的とするもので、特に第一引用例の前記2(三)の作用及びその効果は本件発明の場合と共通しているものということができる。したがつて、審決が本件発明の特許要件の判断に当り、これと第一引用例を対比したことに誤りはない。

三 よつて、原告主張の取消事由は理由がないから、本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

「全体として導電性を有すると共に、少なくともパツケージと接触する部分を、金属等の良導体よりも抵抗が大きい導電性材料で作成したことを特徴とするパツケージ用支持具。」(別紙図面参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!